【皮膚科/耳科シリーズ】実践的な診療フロー ②検査編「ノミ取り櫛検査・ウッド灯検査・皮膚掻爬物直接鏡検」

Vet Derm Tokyoの代表皮膚科医であり、アジア獣医皮膚科専門医の伊從慶太先生に、皮膚科と耳科の診療の流れについて記事を執筆いただきました。

第2回目となる今回は、検査編「ノミ取り櫛検査・ウッド灯検査・皮膚掻爬物直接鏡検」について、お届けします。

※第1回「問診票の記入・問診・身体検査・鑑別疾患の考慮」はこちら
※第3回「検査(毛検査・細胞診)」はこちら
※第4回「検査(真菌検査・細菌検査)」はこちら
※第5回「検査(皮膚生検・アレルギー検査・耳鏡検査)」はこちら
※第6回「診断と処置(洗浄と保湿)」はこちら


【5】検査法
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一般診療において汎用される皮膚科学的検査としては微生物の検出、浸潤細胞の評価、毛構造の評価、皮膚生検、アレルギー検査、耳道の評価が挙げられる。それぞれの検査の適応、手法、解釈を理解することが重要である。


◆ノミ取り櫛検査
適応
ノミ、シラミ、ハジラミ、ツメダニなど比較的大型の外部寄生虫の検出に用いる。

手法
ノミ取り櫛を用いて全身をくまなくコームする(写真8)。

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写真8:全身をくまなくコーミング。背部は特に入念に行う。

櫛に集まった被毛や鱗屑、その他の残渣は白い紙やトレーの上におき、まずは肉眼で外部寄生虫の存在を確認する(写真9)。確認が難しい場合はスコッチテープなどで集積物の一部を取り、スライドグラスに貼り付けて直接鏡検する。

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写真9:櫛に集まった被毛や残渣。写真内の黒色/砂状の構造はノミの糞である。

ノミの寄生が疑われる場合は虫体のみではなく糞も探索する。ノミの糞は黒色・コンマ状~砂状の構造として確認され(写真9)、水に濡らすと滲む性質がある(写真10)。

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写真10:ノミの糞。水道水で濡らすと滲む性質がある。

解釈
ノミアレルギー性皮膚炎は少数のノミ寄生でも発症する可能性がある。したがって、ノミ取り櫛検査でノミが検出されなくても本疾患を否定することはできない。


◆ウッド灯検査
適応
犬や猫の皮膚糸状菌症の主要な起因菌であるイヌ小胞子菌(Microsporum canis)の感染被毛を検出するための簡易スクリーニング検査である。

手法
ウッド灯は検査を行う5~10分前に電源を入れて光源を安定させる。病変部/非病変部に関わらず全身にくまなくウッド灯を当て、黄緑色に蛍光発光する被毛を探索する(写真11)。

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写真11:ウッド灯で黄緑色に発光する被毛を探索。

病変部は1カ所3~5分ほどかけて、ゆっくりと観察する。陽性被毛は鉗子で採取して直接鏡検および真菌培養同定検査の検体として用いる(写真12)。

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写真12:病変部の観察。陽性被毛を鉗子で採取し、検査へ。

解釈
イヌ小胞子菌(M. canis)感染被毛の約50%が陽性反応を示すが、土壌好性菌(M. gypseum)やトリコフィトン属(Trichophyton)の感染の検出には有用ではない。したがって、ウッド灯検査が陰性であっても皮膚糸状菌症を否定することはできない。

鱗屑や痂皮、外用剤塗布部は擬陽性反応を示すことが多いため、ウッド灯が陽性の被毛は必ず採取し、鏡検下で皮膚糸状菌を確認する。


◆皮膚掻爬物直接鏡検
適応
ヒゼンダニ、ツメダニ、ニキビダニなどの外部寄生虫、および皮膚糸状菌の検出に用いる。

手法
皮膚の掻爬には鋭匙や外科用メス刃を用いる。ヒゼンダニ、ツメダニは皮膚の浅層に寄生することから、皮膚から出血を伴わない程度に浅く掻爬する(写真13、14)。皮膚糸状菌も浅い掻爬で検出可能である。検出率を向上するためには広く、複数箇所から採取することが望ましい。

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写真13:浅い掻爬。ヒゼンダニやツメダニの検出に用い、出血しない程度に浅く、広く、複数箇所掻爬を行う。

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写真14:イヌヒゼンダニの虫体。

ニキビダニは毛包内寄生が一般的なため、皮膚から出血を伴う深い掻爬が必要となる(写真15)。毛孔に一致した丘疹、脱毛、面皰などの発疹を指で圧迫しながら掻爬するとニキビダニが検出されやすい。

深い掻爬は出血や疼痛を伴うことからオーナーの印象が悪いこともある。その場合には次回紹介する毛検査を用いる。

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写真15:深い掻爬。皮膚から出血を認めるまで毛包が侵された発疹をピンポイントで深く掻爬する。

掻爬した検体はスライドグラス上で20%KOH溶液(あるいは20%KOH-DMSO 3:1混合液)、ミネラルオイル(イマージョンオイル)に浸漬させる(写真16)。

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写真16:掻爬サンプルの取り扱い。鋭匙などで掻爬した検体は、KOH溶液やミネラルオイルに浸漬する。

検体はカバーグラスで圧平し、顕微鏡のコンデンサーを下げて鏡検する(写真17、18)。

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写真17:鏡検前の検体。カバーグラスで覆い、圧平する。圧平により検体を薄く伸ばさないと、時に鏡検は困難である。

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写真18:鏡検時の顕微鏡の取り扱い。皮膚掻爬物を直接鏡検する際にはコンデンサーを下げる。コンデンサーを下げない状態では視野が不明瞭で虫体(犬のニキビダニ:Demodex canis)を確認しにくいが(A)、コンデンサーを下げるとコントラストがつき、虫体の確認が容易である(B)。

解釈
疥癬におけるヒゼンダニの検出率は決して高くないため、ヒゼンダニが検出されなくても疥癬を否定することはできない。一方、ニキビダニの検出率は高く、複数回/複数箇所の検査で検出されない場合は、ニキビダニ症以外の疾患を考慮すべきである。


次回は検査編「毛検査・細胞診」!
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本記事の続きとなる第3回検査編「毛検査・細胞診」についてはこちら

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ライター紹介

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山口 杏

ブライダル業界・インフラ業界・そして前職ではペットフード業界と、さまざまな業界を渡り歩く編集者。「情報を制する者が、マーケットを制す!」という思いから、Vet Lifeを通じ、飼い主さんのニーズや獣医療業界の最前線情報を届ける、お役立ちライターに成長したいと考えている。趣味は動物ブログを読むこと。好きな犬は柴犬、猫は茶トラ。

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