【皮膚科/耳科シリーズ】実践的な診療フロー ③検査編「毛検査・細胞診」

Vet Derm Tokyoの代表皮膚科医であり、アジア獣医皮膚科専門医の伊從慶太先生に、皮膚科と耳科の診療の流れについて記事を執筆いただきました。

第3回目となる今回は、検査編「毛検査・細胞診」について、お届けします。

※第1回「問診票の記入・問診・身体検査・鑑別疾患の考慮」はこちら
※第2回「検査(ノミ取り櫛検査・ウッド灯検査・皮膚掻爬物直接鏡検)」はこちら
※第4回「検査(真菌検査・細菌検査)」はこちら
※第5回「検査(皮膚生検・アレルギー検査・耳鏡検査)」はこちら
※第6回「診断と処置(洗浄と保湿)」はこちら


【5】検査法
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◆毛検査
適応
毛根、毛幹、毛尖の形態評価、皮膚糸状菌およびニキビダニの検出に用いる。

手法
抜毛鉗子を用いて少量の被毛を把持し、毛の走行に沿ってゆっくりと引き抜く(写真19)。

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写真19:毛の流れに沿って、抜毛する。

脱毛の評価には脱毛部、脱毛部周囲、正常部、色調の異なる被毛部から検体を採取する。採取した検体はスライドグラス上でミネラルオイル(イマージョンオイル)に浸漬し、カバーグラスで覆って鏡検する。

皮膚糸状菌に感染した被毛は胞子や菌糸が被毛を覆うため、正常な被毛よりも太く、粗造に見える(写真20)。

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写真20:イヌ小胞子菌(Microsporum canis)に感染した猫の被毛。

毛根を観察することで毛周期を評価する。成長期毛は太くゴルフクラブのような形態、休止期毛は先が細く箒のような形態を示す(写真21)。

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写真21:毛根の評価。成長期毛は写真下端のゴルフクラブのような形態を示し、休止期毛は写真上部の箒のような形態を示す(犬)。

毛幹では色素分布状態を評価する。淡色被毛脱毛症や黒色被毛毛包形成異常症では巨大なメラニン顆粒が認められる(写真22)。

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写真22:毛幹の評価。毛幹では毛のラインの滑らかさやメラニン色素の分布を観察する。犬の淡色被毛脱毛症では、本写真のように巨大なメラニン色素が不規則に毛幹に分布する。

毛尖は通常先細りになっているが、物理的な刺激(掻破行動など)によって裂毛を認めることがある(写真23)。

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写真23:毛尖の評価。毛尖は通常先細りの形態を呈するが、掻破行動や摩擦などによってちぎれてしまうことがあり、これを裂毛という。本写真は過敏性皮膚炎に罹患した猫の脱毛部より採取した被毛の先端部であり、舐め動作によって毛尖がちぎれている。

解釈
皮膚糸状菌症は感染被毛を採取できなければ見落とす可能性があるため、毛検査が陰性でも皮膚糸状菌症を否定することはできない。ウッド灯検査、掻爬物直接鏡検、真菌培養同定検査と併せて実施することが推奨される。
 
多くの犬種において毛検査では成長期毛と休止期毛が混在して認められる。短毛種では毛周期が短いため休止期毛が優性であるが、プードルなど被毛が伸び続ける(=成長期が長い)長毛種では毛検査において成長期毛が優性となる。したがって、このような長毛種で休止期毛が優性に認められる場合は毛周期異常を考慮する。
 
裂毛が認められた場合はかゆみや摩擦、トリミング行為の可能性を考慮する。


◆細胞診
適応
皮膚表面あるいは深部の微生物増殖(主に細菌と真菌)、角化細胞の変化、炎症/腫瘍細胞浸潤などを確認するために用いる。

手法
(1)テープストリップ
スコッチテープやセロハンテープを用いて、乾燥した皮膚病変(鱗屑など)や直接スライドグラスを当てることが難しい部位に適応する(写真24)。

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写真24:比較的乾燥した病変や趾間などスライドグラスを直接押捺しにくい部分の検体は、テープを用いて採取する。

(2)ガラス直接押捺
スライドグラスを直接病変部に押捺して採取する。膿疱や水疱、びらん~潰瘍、痂皮下など湿潤した病変へ適応する(写真25)。

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写真25:表面の鱗屑や痂皮を除去し、その下部の湿潤下病変に直接スライドグラスを押捺する。

(3)スワブ採取
綿棒を用いて検体を採取し、スライドグラス上に塗布する。凹凸の多い部位や耳道に適応する(写真26)。

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写真26:耳道などテープやガラス押捺で採材が難しい部位では、綿棒を用いて検体を採取する(A)。採取した検体はスライドグラス上に押捺する(B)。

(4) 針吸引
結節~腫瘤など隆起性の病変へ適応する。針(23G)とシリンジ(5mL)を用いて病変部から検体を吸引し、スライドグラス上で塗抹標本を作製する(写真27)。

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写真27:一般的には23Gの注射針、5mLのシリンジを用いて、結節~腫瘤性の皮膚病変から採取する。

(5)染色
(1)~(4)で採取した検体はDiff-Quik染色、ニューメチレンブルー染色で簡易染色を施すことが一般的だが、対象とする細胞や微生物によってはライトギムザ染色、グラム染色などを併せて実施する。テープストリップ検体はテープごと染色可能である(写真28)。

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写真28:テープ採取サンプルの染色。テープ自体をそのままDiff-Quik染色に供することが可能である(A)。染色が終わったテープは水洗して、スライドグラスに貼付して鏡検する(B)。

解釈
皮膚や耳道において細菌の増殖を認めた際には、炎症細胞の浸潤を評価する。炎症細胞の浸潤を伴わずに菌体のみが認められる場合は感染が成立してない。
 
感染が成立している場合は菌体の増殖に伴って好中球を主体とする炎症細胞浸潤が認められ、好中球による菌体の貪食が確認される(写真29)。

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写真29:細胞診における細菌感染像。菌体の増殖、好中球による貪食像、好中球の変性が認められる。

感染を示唆する所見が確認された場合には、細菌培養同定検査の実施を検討する。


次回は検査編「真菌検査・細菌検査」!
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本記事の続きとなる第4回検査編「真菌検査・細菌検査」についてはこちら

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ライター紹介

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山口 杏

ブライダル業界・インフラ業界・そして前職ではペットフード業界と、さまざまな業界を渡り歩く編集者。「情報を制する者が、マーケットを制す!」という思いから、Vet Lifeを通じ、飼い主さんのニーズや獣医療業界の最前線情報を届ける、お役立ちライターに成長したいと考えている。趣味は動物ブログを読むこと。好きな犬は柴犬、猫は茶トラ。

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