【獣医師の臨床5年目までの考えと動き方を知る④】梅田裕祥先生(横浜どうぶつ眼科)インタビュー

多忙を極める獣医療業界において、第一線で活躍する獣医師たちがどう学び、どうキャリアを築いていったのかをご紹介する本シリーズ。

シリーズ最終回、第4弾となる今回は、眼科を専門としていらっしゃる梅田裕祥先生にお話を伺います。
眼は特殊な機械がなくても、ある程度はみられる臓器
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梅田 裕祥 先生(横浜どうぶつ眼科)
【経歴】
酪農学園大学卒業。順天堂大学大学院にて医学博士号を取得。獣医眼科学専門医(比較眼科学会)。


梅田先生が、眼科の専門医を目指されたきっかけを教えてください。
病気について学べば学ぶほど、その全体像が分かるようになっていき、のめり込んだ
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学生時代から眼科の所属だったのですが、最初は分からなかったことが、やればやるほどみられるようになっていき、そこからのめり込んでいくようになりました。

スリットランプでも眼底検査でもそうですが、どういう病気があるのかを調べながら、その全体像が分かるようになってくるとどんどん楽しくなり、いつの間にか専門医を目指すようになりました。


梅田先生が臨床5年目くらいまでのときには、どうスキルアップを図っていらっしゃったのでしょうか。
眼科専門病院で技術を積みながら、自分から動いて学会などにも参加
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卒業してからもずっと眼科ばかりやっていたので、眼科専門の病院で専門医を目指すトレーニングを積むようになりました。教科書や文献を読みながら臨床的な技術を身に付け、当時勤務していた病院のご厚意で、大学院(社会人枠)での研究もさせてもらいました。

その他にも、眼科の場合は手術が特殊なので、豚眼を使った顕微鏡手術のトレーニングをコンスタントにやっていました。当時はセミナーや勉強会も少なかったので、自分から動いて、いろいろな先生方に教わったり、学会などに参加して学ぶようにしていました。


現在、一次診療の動物病院で行われている眼科診療について、どのような印象をお持ちでいらっしゃいますか。
苦手意識をもつ方が多いが、二次診療を活用しつつ取り組んでほしい。ただ、眼圧計だけは購入を。
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苦手意識を持たれている先生も少なくないような気がしています。

例えば白内障の場合、「手術の成績がよくない」「お金がかかる」「動物は目が見えなくても大丈夫」などと考えて手術は勧めないという先生もいらっしゃるかもしれません。

ですが、現在は眼科の二次診療のレベルも上がっていますし、飼い主さんの意識も変わってきているため、白内障が進行しているのであれば、やはり手術を第一選択としていただきたいと思います。

あとは最低限、眼圧計は購入していただきたいと思います。

緑内障は失明を招く眼科緊急疾患の1つですが、眼圧計がないと適切な診断ができません。

国内ですと、遺伝的に8~10歳前後の柴犬などで多くみられますが、朝から目をつぶっているということで来院され、眼を開けてみてみると、白目が赤くなっている。結膜炎ではないかと思い、抗菌目薬を処方して2~3日様子をみるというケースが非常に危険です。

もしこれが緑内障で眼圧が上がっていると、24~72時間で失明してしまうともされているため、このときに眼圧を計るかどうかで、すべてが決まってしまうといえます。

教科書にも白目が赤いときはすべての症例で眼圧を計るべきと書かれていますし、検査の段階で誤ってしまうと、大きなトラブルにもなりかねないので、ぜひ眼圧計は購入して欲しいですね。


眼科診療のスキルをアップするには、どのようなことを行えばよいでしょうか。
肉眼でもよいので、まずは眼をしっかりみることが大切
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まず、特殊な検査機器を揃えないと眼はみられないと思わないでいただきたいです。

眼は機械がなくてもある程度はみられる臓器です。肉眼でもよいので、よく眼をみてもらい、おかしいと思ったらスマホでもよいので写真を撮り、詳しい先生に相談していただくだけでも勉強になるはずです。

とにかく、眼に光を入れてよくみていただくということが大切だと思います。


若い先生方や眼科が苦手な先生方に、お伝えしたいことはありますか。
一歩踏み込んだ状態把握をして、あとは二次診療との連携を!
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病態を“もう一歩”踏み込んで把握して欲しいと思います。

「角膜潰瘍にはこの薬」「白内障だからこの薬」というのではなく、「角膜潰瘍でも細菌感染があるから抗菌薬も使う」とか、「白内障の進行を抑える目薬は眼が白くなってしまってから投与しても意味がないため、白くなってしまったら抗炎症治療を行う」など、病態によって治療法が変わるため、あともう少し踏み込んでいただきたいですね。

それと、眼をみるためのポイントはたくさんあるわけではないと思いますので、基本的なことだけはしっかり押さえていただいて、あとは二次診療に送っていただくようなスタンスでよいと思います。

みんなが眼科の検査機械をすべて揃えたり、白内障の手術をできなければいけないということでもないと思いますので、地域医療の観点で、連携をしながら診療をしていただけたらと思います。

眼科が苦手な先生方も、自分一人ですべてを治そうと考えると大変なので、「これ以上は危ない」とか「これはやってはいけない」という部分を最低限押さえていただき、みられるところだけはみていただくスタンスがよいのかなと思います。


最後に、梅田先生の今後の目標を教えてください。
「臨床・研究・教育」にバランスよく取り組み、新しい情報の発信に努めたい
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地域医療の一端をしっかりと担っていきながら、情報が古くならないように新しい情報を常に発信していきたいと思っています。専門医として「臨床・研究・教育」の3本柱をバランスよくやっていきたいですね。

(記事提供:CLINIC NOTE 2017 JULY 88-89.)


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ライター紹介

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山口 杏

ブライダル業界・インフラ業界・そして前職ではペットフード業界と、さまざまな業界を渡り歩く編集者。「情報を制する者が、マーケットを制す!」という思いから、Vet Lifeを通じ、飼い主さんのニーズや獣医療業界の最前線情報を届ける、お役立ちライターに成長したいと考えている。趣味は動物ブログを読むこと。好きな犬は柴犬、猫は茶トラ。

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