【皮膚科/耳科シリーズ】実践的な診療フロー ⑤検査編「皮膚生検・アレルギー検査・耳鏡検査」

Vet Derm Tokyoの代表皮膚科医であり、アジア獣医皮膚科専門医の伊從慶太先生に、皮膚科と耳科の診療の流れについて記事を執筆いただきました。

第5回目となる今回は、検査編「皮膚生検・アレルギー検査・耳鏡検査」について、お届けします。

※第1回「問診票の記入・問診・身体検査・鑑別疾患の考慮」はこちら
※第2回「検査(ノミ取り櫛検査・ウッド灯検査・皮膚掻爬物直接鏡検)」はこちら
※第3回「検査(毛検査・細胞診)」はこちら
※第4回「検査(真菌検査・細菌検査)」はこちら
※第6回「診断と処置(洗浄と保湿)」はこちら


【5】検査法
201708231343_1.jpg
 
<今回取り上げる検査>
・皮膚生検(皮膚病理組織学的検査)
・アレルギー検査
・耳鏡検査    

◆皮膚生検(皮膚病理組織学的検査)
適応
本シリーズの第2回~第4回で紹介した一般的な皮膚科学的検査(ノミ取り櫛検査・ウッド灯検査・皮膚掻爬物直接鏡検・毛検査・細胞診・真菌検査・細菌検査)において、診断あるいは除外が困難な疾患に適応される。
 
皮膚深部感染症、脱毛症、免疫介在性・自己免疫性疾患、腫瘍性疾患で用いられる機会が多い。

手法
採取法としてはパンチ生検が汎用されるが、病変の部位・深度によっては楔形生検や全層生検を用いる。パンチ生検では直径6~8mmのトレパンを一般的に用いるが、粘膜境界部や末端部、微小な病変では直径の短いトレパンを用いる。
 
採取には新鮮な原発疹(表1)を中心に、肉眼上で形態の異なる複数の発疹を選択する(通常は3~4カ所ほど採取)。続発疹の中でびらん~潰瘍など、表皮が欠損している病変は診断的価値が乏しい。

201708231343_2.jpg
表1:原発疹と続発疹

脱毛病変の場合は完全脱毛部、脱毛境界部、正常発毛部、被毛色の異なる部位を採取する。
 
疑われる疾患によっては生検前に休薬を実施しなければならない(免疫介在性疾患が疑われた場合の副腎皮質ホルモン製剤や免疫抑制剤の休薬など)。
 
採取する病変部の処置として剪毛を第一に行うが、バリカンなどで病変を傷つけないように剪刀などで慎重に剪毛する。次に採取する病変を写真撮影し、四方をマジックペンなどでマーキングする(写真36)。痂皮や鱗屑など病変部の付着物は除去しない程度に病変を消毒し、マーキングした四方から局所麻酔薬(リドカインやマーカイン)を皮下へ注入する。

201708231343_3.jpg
写真36:皮膚生検を行う部位の処置。

トレパンを一方向にゆっくりと回転させて切開し(写真37A)、皮下をメッツェンバウムなどで切除する(写真37B)。この際にピンセットで皮膚表面を掴んではならない(特に有鉤のピンセットの使用は避ける)。

201708231343_4.jpg
写真37:トレパンによる皮膚生検。

採取した検体はそのまま固定液(10%中性緩衝ホルマリン液など)に浸漬すると湾曲するため、ろ紙や厚紙の上に1分ほど静置する。その際に被毛の走行を紙上に記載する(写真38)。

201708231343_5.jpg
写真38:生検を行ったサンプルの処置。鉛筆などで被毛の走行を紙上に記載すると、検査会社においての標本の作製の一助となる。

検体は紙に付着した状態で固定液に浸漬して、外注検査先へと郵送する。

外注先と解釈
201708241943_1.jpg

皮膚病理組織学的検査の外注先としては、皮膚科臨床に精通した皮膚病理診断医が所属する検査会社を選択することが推奨される。

診断を依頼する際には必ず生検時に撮影した臨床写真、症例のシグナルメントと病歴、院内で実施した各種検査結果を添付する。皮膚科臨床に精通した診断医はこれらの情報からも診断・治療アドバイスが可能となる。
 
一方、皮膚病理検査を行えば必ず確定診断に至る訳ではなく、採取する発疹の選択や時期を誤ると診断に決定的な所見を得られない可能性を考慮する。皮膚生検の採取に不安がある場合には事前に診断医に相談するとよいだろう。
 
※本記事の執筆者・伊從先生、そして複数の皮膚病理診断医の方々が所属されるアイデックスラボラトリーズ株式会社の皮膚病理検査についてはこちら(※外部サイトへ移動します)


◆アレルギー検査
適応
アレルギー検査にはアレルゲン特異的IgE検査、アレルゲン特異的皮内試験、リンパ球反応検査などが挙げられる。
 
主に犬アトピー性皮膚炎症例における原因アレルゲンの回避やアレルゲン特異的減感作療法の実施、また犬の食物アレルギーにおける除去食試験や食事管理の内容を検討する際に適応を考慮する。

手法
本邦における外注検査としてはアレルゲン特異的IgE検査、リンパ球反応検査が利用可能であり、いずれの検査も血液採取のみの簡便な検査である(採取した血液の処理・郵送法は各検査会社の案内を参照)。
 
犬アトピー性皮膚炎ではアレルゲン特異的IgE検査を、食物アレルギーではIgE検査とリンパ球刺激試験の両者の実施を検討する。
 
アレルゲン特異的皮内試験は院内で実施可能な検査ではあるが、国内では入手可能な抗原液が限られていること、剃毛・鎮静処置など手技が煩雑であることから、積極的に実施されることは少ない(写真39)。
 
副腎皮質ホルモン製剤を投与していた場合は、休薬後の実施を検討する。

201708281437_1.jpg
写真39:鎮静化で胸側部の皮膚を剃毛し、ハウスダスト、その他の昆虫、花粉や植物、微生物などの抗原液を皮内注射し、反応を観察する。陰性対照として生理食塩水(最上段1列目)、陽性対照としてヒスタミン液(最上2列目)を用いている。本症例は犬アトピー性皮膚炎と診断され、減感作療法を希望されたため、皮内試験を実施した症例である。

解釈
201708241943_2.jpg

アレルギー検査は、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーの診断・管理の補助として有用であるが、本検査のみで診断を行うことはできない。アレルギー検査が陽性であってもアトピー性皮膚炎や食物アレルギーと診断とはならない。また、アレルギー検査が陰性であってもアトピー性皮膚炎や食物アレルギーを否定することはできない。
 
アレルギー検査の結果だけにとらわれることなく、臨床症状は合致しているのか、その他の疾患は除外されているのか、発症季節や環境、食事内容と検査で陽性を示した原因アレルゲンに関連はあるのかといったことを考慮しなければならない。


◆耳鏡検査
適応
耳科疾患は、皮膚疾患に次いで来院数の多い疾患とされる。小動物臨床では耳トラブルを主訴に来院した症例において皮膚トラブルが見つかる、あるいはその反対の現象と遭遇することが多い。したがって、皮膚症状が認められる症例においても耳鏡検査を日常的に実施することが望ましい。耳鏡検査は耳道の評価(特に外耳)に有用な検査法である。

手法
耳鏡およびチップを準備する。チップは1症例につき2つ用意する。耳鏡を耳道に挿入する前に、症状の対称性と耳介内側部皮膚~耳孔部の皮膚症状を確認する。犬の耳道は垂直耳道と水平耳道から構成されL字の構造をとっている(写真40)。

201708231708_2.jpg
写真40:犬の耳道構造。

このような外耳道構造のため、耳孔から垂直に耳鏡を挿入すると症例に疼痛が生じるとともに、鼓膜までの視野が明瞭にならない。したがって耳介を観察者側へ引き寄せながら(垂直耳道を水平にするようなイメージ)ゆっくりと耳鏡を挿入する(写真41)。

201708231708_3.jpg
写真41:耳鏡による観察。

垂直耳道および水平耳道の発赤、浮腫、びらん、隆起性病変、耳垢量を確認し、また鼓膜の色調や損傷の観察を併せて実施する(写真42)。

201708231708_4.jpg
写真42:外耳炎の所見。アトピー性皮膚炎に罹患した犬の外耳炎所見。垂直耳道部の発赤および浮腫、耳垢の軽度堆積が認められる。

耳垢や滲出物などが過剰な場合は耳鏡を挿入する前に耳道の洗浄を行う。鼓膜の損傷が疑われる症例では耳道洗浄液よりも生理食塩水やリンゲル液を用いて洗浄する方が良い。除去した耳垢はアルカリ溶液に浸漬して直接鏡検(皮膚掻爬物直接鏡検と同様の観察)し、また膿や滲出物と併せて細胞診を実施する。

解釈
201708241943_3-600x0.jpg

犬の外耳炎の原因として発生率が高いのはアトピー性皮膚炎や食物アレルギーであり、これらの疾患では左右対称性の症状を示すことが多い。一方、耳道内異物やポリープなどでは片側性であることが一般的である。
 
犬のアトピー性皮膚炎では食物アレルギーよりも耳介内側部皮膚~耳孔部の皮膚症状(紅斑、びらん、痂皮、苔癬化など)が強いことが多い。犬のアトピー性皮膚炎では垂直耳道の炎症所見が強調される傾向があるが、食物アレルギーでは垂直~水平耳道の全体にわたって炎症所見が認められる傾向がある。
 
耳鏡検査では垂直および水平耳道~鼓膜周辺までの観察が限界である。中耳炎を疑う症状や鼓膜の損傷を認めた症例では耳道内視鏡やCT検査などを検討する。


次回は「診断と処置(洗浄と保湿)」!
201708231708_5.jpg

本記事の続きとなる第6回「診断と処置(洗浄と保湿)」についてはこちら

※第1回「問診票の記入・問診・身体検査・鑑別疾患の考慮」はこちら
※第2回「検査(ノミ取り櫛検査・ウッド灯検査・皮膚掻爬物直接鏡検)」はこちら
※第3回「検査(毛検査・細胞診)」はこちら
※第4回「検査(真菌検査・細菌検査)」はこちら

※第6回「診断と処置(洗浄と保湿)」はこちら

ライター紹介

56_ext_01_0.jpg

山口 杏

ブライダル業界・インフラ業界・そして前職ではペットフード業界と、さまざまな業界を渡り歩く編集者。「情報を制する者が、マーケットを制す!」という思いから、Vet Lifeを通じ、飼い主さんのニーズや獣医療業界の最前線情報を届ける、お役立ちライターに成長したいと考えている。趣味は動物ブログを読むこと。好きな犬は柴犬、猫は茶トラ。

関連タグ