デンタルホームケア指導法 ②正しい歯磨きの方法とデンタルケア商品の利用

フジタ動物病院 院長 藤田桂一先生に執筆いただいた記事『デンタルホームケア指導法』の、第2回「正しい歯磨きの方法とデンタルケア商品の利用」をお届けします。

※第1回「歯ブラシができるようになるまでの流れ」についてはこちら

【2】正しい歯磨きの方法
★歯ブラシの選び方
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歯ブラシは、動物用のものでも人間の子供用のものでもよいが、比較的小さなヘッドで適度に軟らかい細い毛のついたものがよい。細い毛であれば歯肉溝の中に入り込み、歯肉溝の中も磨くことができる。
 
※歯ブラシは長期間使用していると毛の弾性が減少して毛先が広がり、歯肉溝内や歯間部に毛先が入り込まなくなって歯垢除去効果が減少し、歯肉や粘膜に損傷を与えるので、新しい歯ブラシと交換する。

★歯磨きの方法
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◎小型犬・猫:バス法
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◎中型犬以上:バス法+フォーンズ(ローリング)法
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バス法は、歯ブラシの歯面に当てる角度を約45度にして、前後に小刻みに歯ブラシの毛先を動かして歯頸部と歯肉溝内を磨く。
 
歯ブラシに慣れさせることができたら、はじめて歯ブラシを使用する。口腔内では歯以外は粘膜で被われており、粘膜に乾燥したものを挿入すると痛がるため、歯ブラシやシートは湿らせて実施する(写真7)。

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(写真7)

水や湯、あるいは、個体が好きな味の歯磨きペーストを付けて、最初は口を閉じたまま上顎臼歯の頬側面を磨くようにする(写真8)。

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(写真8)

歯磨きを行うことで、唾液が多く分泌され、唾液による清浄効果(自浄作用)や抗菌作用も期待できる。
 
次第に慣れてきたら、前述のように開口させて歯の舌側面や下顎臼歯の頬側面を磨くようにする(写真9)。歯ブラシを用いた歯磨きは、歯肉縁下1~3mmまでの歯垢が除去可能である。

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(写真9)

歯ブラシは、徐々に段階を踏んで慣れさせていくことが重要である。

◆注意◆------------------------------------------
人用歯磨きペーストは、フッ素を多く含んで消化器障害を引き起こすことがあるため、使用してはいけない。
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★歯磨きを始める年齢
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理想的には社会的形成期といわれる頃-乳歯列(生後3週間から4あるいは5ヶ月齢まで)の頃から歯磨きに慣れさせることである。

ただし、歯の交換期において脱落しそうな乳歯は歯根が吸収され、歯肉縁が発赤して炎症を認めるので、その部位の歯磨きは避ける。
 
また、この社会的形成期に実施できなくとも、ケアを行おうと思った時がデンタルケアのスタートである。

しかし、中年齢~高齢の個体では、多くはすでに歯周病に罹患しているので、病院で歯垢歯石除去や抜歯などの治療を行って、正常な歯肉の状態にしてからデンタルケアを開始する。

★歯磨きを行う頻度
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犬では3~5日で、猫では約1週間で歯垢から歯石に変化するので、歯磨きでは歯石の除去は不可能である。したがって、少なくとも歯垢の段階で歯磨きを行うことが重要であり、理想的には1日1回ケアをするとよい。
 
デンタル模型(透明顎や、歯と顎)は、飼い主に実際の歯磨きの方法を知ってもらうために、実施している光景を示すことで使用できる。

その後、飼い主が歯磨きを適切にできているか否かを確認するために、個体の歯に歯垢染色液を塗って磨き落としがある部位を示すとよい。

【3】デンタルケア商品の利用について
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現在、動物病院のみならず、ホームセンターやペットショップなどでは歯周病予防効果を示す、いわゆるデンタルケアグッズや療法食、トリーツなどが数多く市販されている。

個体が協力的でないなど歯磨きができない場合は、療法食やデンタルケアグッズの使用は効果的である。

療法食
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・食餌表面にポリリン酸の微結晶でコートしたものがあり、その結晶が歯垢表面に物理的バリアを形成することにより、歯垢が石灰化して歯石に変化する過程を防ぐ。

・特殊な層状構造の食物線維によって咀嚼するたびに歯面に付着したものを物理的に削ぎ落とし、除去する。

歯みがきペースト・オーラルスプレー
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グルコースオキシターゼ、ラクトペルオキシターゼ、ラクトフェリン、リゾチームなどによる抗炎症効果を期待、歯周病関連細菌の生息を防ぐ。

液体
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飲み水にキシリトールや抗炎症作用の天然酵素などが含まれた液体を混ぜる。

その他
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・デンタルガム
・デンタルチュウ
・口腔滴下品
・口腔用プロバイオティスク
・口腔用インターフェロン

これらの商品は、程度の差はあるが、歯垢除去効果や歯垢・歯石付着予防効果、あるいは口臭抑制を示すと思われる。

しかし、咬むタイプの商品は、咬んだ部位のみ効果を示すが、他の部位では効果的でなく、口腔内に入れるだけや飲み水に含ませるタイプの商品は強い効果は望めない。
 
最大に効果を示すのは歯面の機械的な清掃である。したがって、歯垢・歯石が付着しやすい歯頸部には、結局歯ブラシを用いた歯磨きに勝るものはない。そのため歯磨きと他のケア商品を併用することが薦められる。

◆注意◆------------------------------------------
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動物が咬むだけで歯周病予防効果があると謳っている商品も多いが、硬い生皮、蹄(ひづめ)、骨、プラスチック、金属、硬いゴム、玩具などは、特に犬の上顎第4前臼歯の平板破折や歯の摩滅を引き起こすことが比較的多いため、与えないように注意する。
 
また、比較的軟らかいと思われるテニスボールやサッカーボールなども、長時間与え続けることにより咬耗を生じることもあるので、注意が必要である。
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(藤田先生の記事は、ここまでです)

高まるデイリーケアの需要!
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飼い主さんの愛犬や愛猫をケアしたいという思いは年々高まっており、「動物病院で方法やケア用品について教えてもらえたら…」と望まれている方はたくさんいらっしゃいます。

この機会に歯磨きケアの重要性と方法を伝えてみてはいかがでしょうか?

※第1回「歯ブラシができるようになるまでの流れ」についてはこちら

ライター紹介

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山口 杏

ブライダル業界・インフラ業界・そして前職ではペットフード業界と、さまざまな業界を渡り歩く編集者。「情報を制する者が、マーケットを制す!」という思いから、Vet Lifeを通じ、飼い主さんのニーズや獣医療業界の最前線情報を届ける、お役立ちライターに成長したいと考えている。趣味は動物ブログを読むこと。好きな犬は柴犬、猫は茶トラ。