【動物病院ですぐ使えるマッサージテクニックも!】Lola Michelin先生の来日特別講座ダイジェスト

2018年1月より新たにスタートする、一般社団法人 日本動物マッサージ協会主催の「動物マッサージ講座」。

動物マッサージはけがや病気治療のサポート、介護ケア、リラクゼーションへの活用が期待されており、本講座では動物行動学や解剖学、生理学などに基づいたマッサージテクニックを体系的に学ぶことができます。
 
その開催に先駆け、11月19~26日に全国4カ所で、アメリカで長年にわたり動物マッサージの実践・普及活動を行ってこられたLola Michelin先生を招き、特別講座が行われました。
 
テーマは「動物マッサージの意義と効用/リハビリテーションマッサージ」。術後マッサージのテクニックや、アメリカの最新マッサージ技術などが紹介されました。
 
今回はその内容をダイジェストでお届けします。

講演者紹介
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Lola Michelin 先生
・North West School of Animal Massage Founder & Principal (詳細はこちら)
・Teaching Specializing in Rehabilitation Massage
・Teaching Specializing in Performance Massage
・Teaching Specializing in Thai Massage
・Private Practitioner in Equine Performance Massage
・動物マッサージのカリキュラム開発・講演・著作活動等、多岐に渡り活躍中。

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通訳:森 恵 先生
・Small Animal Massage Practitioner
・Animal Sport Massage Practitioner
・Animal Rehabilitation Massage Practitioner
・Animal Nutritionist
・Animal Natural Medicine Practitioner
・Dog Trimmer(Japan)
・一般社団法人 日本動物マッサージ協会代表理事
・IAAMB(アニマルマッサージ&ボディワーク国際協会)会員
・日本動物リハビリテーション学会会員

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一般社団法人 日本動物マッサージ協会とは
日本において動物マッサージの認知度を高め、専門的な技術取得者を増やすことで、動物の健康促進および人と動物との絆の構築に貢献することを目的とした団体。

動物マッサージ教室の運営や動物マッサージ師の派遣、講演会などの活動を行っている。(詳しくはこちら)
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動物病院におけるリハビリテーションマッサージの方法と効果
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1つ目のテーマは「リハビリテーションマッサージ」。病気やケガからの回復および終末期の介護ケアに焦点を当て、お話しをされました。
 
マッサージの持つ力についてLola先生は次のように言葉にされます。
「体に触れること、すなわちタッチは、自然で最もパワーのある方法です。人間も動物も生まれながらに触れられることを求めています。マッサージは筋肉の緊張や疲れを取るだけのものと思われがちですが、それだけではなく、マッサージを行うことで血圧を下げ、組織へ安定した酸素供給を行い、血管を広げて循環器系に良い影響を与えることもできます。」
 
アメリカでは術後に長期間入院するということはなく、術後はクライアントの家にセラピストが訪問し、マッサージケアを行うというのがスタンダード。往診のようなかたちで行われています。
 
また、今アメリカで最も注目をされているのは終末期のケア。これ以上治療ができないという場合にも、セラピストが作成したプロトコルに沿って、マッサージが活用されています。オーナーの「何かをしてあげたい」という気持ちにも寄り添えるからだそうです。
 
今回は術後ケアに使えるマッサージテクニックが公開されました。

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パッシブタッチ(1~2分)
パッシブタッチは、手を動かさず、体の上に手を置くだけというシンプルなテクニック。神経を落ち着かせ、皮膚を温め、痛みを軽減することができます。一番良いのは片手を胸の前に、もう一方の手を腰のところに置くこと。胸のほうは免疫に、腰のほうは痛みを和らげるツボがあり、リラクゼーションにも効きます。

エフラージ(3~5分)
エフラージは、なでるテクニック。頭のほうから始めて、できるだけ後ろのほうまで流すようになでます。循環を改善し、代謝を促します。
 
フリッキング(1~2分)
指でやさしくはじくような動きのタッチ。頭のほうから尾へ、頭のほうから後肢へと行います。リンパの流れをよくして、免疫を高めます。
 
ラビング(1~2分)
手の平やゆるい拳で素早く体をさすります。体を温める効果があるので、寝たきりの動物などに使用します。
 
カッピング(1~2分)
なにかをすくうときのように手を少し丸め、トントンとやさしく体をたたきます。カッピングは、呼吸困難のときや短頭種が呼吸しづらいときに効果的なテクニックです。また短頭種は麻酔が抜けにくいため、麻酔を早く抜きたいときも有効です。
 
耳もツボがたくさんあるため、耳の縁をさすってマッサージを行います。
 
エフラージ(3~5分)
再び、全体をなでていきます。

マッサージの時間は、動物の大きさにより調整が必要とのこと。
 
セミナーでは休憩時間の間も、マッサージの力加減を体験してみたいという受講者の方々がLola先生と森先生のもとに集まり、熱心に学んでいました。

成功すれば永続的に効果を発揮!最新のマッサージ技術「MLT(靭帯徒手療法)
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2つ目のテーマは「MLT(靭帯徒手療法)」。損傷した筋肉のまわりにできる靭帯のトリガーポイントを治すことで疼痛を緩和し、回復につなげるという最新のテクニックです。
 
靭帯徒手療法は10年ほど前に、アメリカの科学者たちによって開発されたもの。靭帯はトリガーポイントができると筋肉が硬直して神経を圧迫し、脳への伝達を妨げるようになり、また筋肉が痙攣を起こすことで痛みも増幅してしまいます。MLTはトリガーポイントを見つけて治療することで筋肉を解放し、伝達をスムーズに戻すことができるそうです。

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開発当初はヒトへの療法でしたが、2012年にLola先生が本療法を動物へ適応し、トレーニングをスタート。
 
「動物が興奮しているとき、落ち着きがないとき」「反復するストレス傷害があるとき」「原因不明の疼痛があるとき」「固有位置感覚の消失時(ナックリング)」などに用いられ、この治療法が成功すれば、効果は長期的に認められるそうです。
 
ただ残念なのは、まだアメリカでしか学習の場がないという点。今後の日本での導入が期待されます。

治癒を促進する「キネシオロジーテーピング」
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最後に紹介されたのは「キネシオロジーテーピング」です。
 
キネシオロジーテーピングは筋肉の動きを止めるのではなく、動きのサポートを目的としたもの。日本の加藤建造氏により発案され、ビバリー・ゴードン博士によって動物へも適応されるようになりました。
 
活用法はさまざまですが、例えばテープで皮膚を持ち上げ、皮膚と筋肉の間に空間を作れば、血液や酸素の流れをスムーズにすることができます。テープを貼る強さや向きを変えることで、「骨格筋のサポートやリラクゼーション」「関節のサポート」「循環器系の改善」などに用いられています。
 
ヒトと動物では使用できるテープが異なり、ヒト用のテーピングテープが皮膚をメインに考えられているのに対し、現在アメリカで活用されているEqui-Tapeは動物の毛を考慮して作られています。テープは特殊な作りになっており、空気も十分に通し、正しい位置に貼れば1週間ほどもつとのこと。長い期間、痛みの緩和や血流の改善に効果が期待できます。Equi-Tapeは日本でも購入することが可能です。

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今回の講演では、症例報告に加え、リラクゼーションとサポートのためのテーピングの実演が行われました。受講者も檀上に上がり、Lola先生に直接指導を受けながら、テーピングに挑戦しました。

広がる動物マッサージ活用の場
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「マッサージの成功には、正しい教育を受け、経験を積むことが欠かせません」とLola先生。
 
特に動物の行動学を学ぶ必要があるとのこと。動物病院では処置時に保定を行いますが、マッサージでは保定をすると筋肉が硬直してしまうため、動物の動きを読む必要があるのだそうです。
 
それぞれの動物に沿ったプログラムを組むためにも、しっかりとした知識と経験を身につけたいですね。
 
今回主催された一般社団法人 日本動物マッサージ協会の講座はこちらから。ぜひご覧ください。

ライター紹介

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山口 杏

ブライダル業界・インフラ業界・そして前職ではペットフード業界と、さまざまな業界を渡り歩く編集者。「情報を制する者が、マーケットを制す!」という思いから、Vet Lifeを通じ、飼い主さんのニーズや獣医療業界の最前線情報を届ける、お役立ちライターに成長したいと考えている。趣味は動物ブログを読むこと。好きな犬は柴犬、猫は茶トラ。