【開業シリーズ①】「開業したい!」と思ったときに、事前検討すべきこと

はじめまして、Vet Life編集長の蓮沼です。今回は開業シリーズとして、動物病院で働きながら「開業したい!」と思っている方、または「将来開業したいな…」と思っていらっしゃる方を対象として、どんなことを考えておくべきか、お伝えしたいと思います。

なお最初に申し上げておきますと、私は獣医療の専門家でもなければ動物病院経営の経験もありませんので、大部分の読者の方のような専門的な知識はございません。しかし、ビジネスマンとしていくつかの新規事業運営などを行ってきた関係から、皆さまとは異なる観点がご提示できるかと思います。ぜひ気軽に読んでいただき、「なるほど! こういった観点もあるのか」と思っていただければ幸いです。

それでは、第1回目として事前検討として考えておくべきことについて、触れたいと思います。

気持ちを残しておき、熟成させる

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“開業したい”と思うタイミングやきっかけ、それに内容は、人によりさまざまだと思います。

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「今の勤務先と同じようなサービスを、自分の故郷で実現したい。(=同じサービスを別商圏で実現)」
「今の勤務先にはない、○〇サービスに特化した病院を経営したい。(=異なるサービスを同商圏で実現)」
「雇われているのは性格的に合わない。自分で経営をしたい。」
「自分の実力なら、開業しても十分にやっていけるし、お金も稼げるのではないか。自分の力を試したい。」
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まず、私がおすすめしたいのは、それらの思いを記録として文章に残しておくことです。さらにその際のポイントは、「人には絶対に見せない」という前提で残しておくこと。人に見られることが少しでも頭をよぎると、どうしても人の性で格好をつけて書きたくなってしまいます。「お客さまに喜んでいただくために」とか「社会に貢献するために」など、本心からそう思っているのであれば、そのように書いてもよいのですが、この段階ではいったん人に見せる物ではないので、そういった考慮は必要ありません。

自分の携帯電話のメモ帳に書いてもよいですし、プライベートのPCに書いても、日記に書いても構いません。ネガティブな動機であろうが、実力の裏付けがなかろうが、全く問題ありません。また文量についても気にする必要はありませんので、自分の考えていること、自分の気持ちを偽らずに書いてみてください。ここで書いたことは消さずに、思い出す都度どんどん日記のように追記していくとよいでしょう。こうすることにより自分の考えがより整理されていきます。

記載例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
[2015年7月1日]
ここ2年伸び悩んでおり成長感がない。今の病院で新しく学ぶこともなくなってきた。。。そろそろ独立を考える時期なのか?

[2015年11月1日]
久しく独立のことを忘れていたが、大学の同級生の**と会食。今は**市で病院を開いている。開業の時の借金は*000万円とのこと。正直尻込みするが、楽しそうだ。

[2015年12月1日]
自分が開くとしたらどんな病院だろう? 自分ができる事や特徴。避妊・去勢手術(猫100件/年)、丁寧なカルテ、人当たりの良さ…もうちょっと深く考えてみるか。
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このように書いていき、「よし!やはり独立かも!」と思い始めてきたら、それで良し。「あまり気乗りしないな…」という場合は、まだ考えるべき時期ではないのかもしれません。日々の仕事を行う中で何か気づきや、発見があるかもしれません。その場合でもメモは消さずに、いったん判断を保留したうえで目の前の仕事に取り組まれることをおすすめします。そして、また独立を考え始めたらこのメモを開くようにしましょう。


事業計画を作る上で何を考えるべきかを知り、埋めていく
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気持ちの熟成が進んだら、次にするべきことは自分が開業したらどんな動物病院にするのか、簡単でも良いので事業計画を作ってみることです。「いきなり事業計画といっても、何を作れば良いものやら…」と、ピンとこないかもしれません。そこで参考になるのが、国が関わる創業支援の取り組みです。

例えば創業・ベンチャー支援を行っている中小企業庁のホームページでは、「ビジネスプランの作り方」として、以下の項目を含んだ資料を作ることをすすめています。
<参考>http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/sogyo/essence/support_04.html

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・事業の全体像…経営理念、事業の内容、ターゲットとする市場、顧客ニーズ
・事業の分析…新規性・独自性、市場規模と特性、競合状況と優位性、マーケットポジション、リスク分析
・事業展開…商品開発計画、製造・調達計画、販売計画、将来(3~5年後戦略)
・財務計画…収支計画、資金計画、財務分析
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全部これらを書く必要性は無いかもしれませんが、最初は何が必要で何が不要かは分からないもの。まずは素直に従って書いてみましょう(※もちろんこの項目が気に入らない場合は、自分がWEB上で検索して見つけた事業計画書に沿って書いてみるでも構いません。)

この時点でも、先ほどのようなメモ帳ベース、テキストで各項目1行ベースで構わないので、どんどん書いていってください。財務計画もこの時点では文字で簡単に、入るお金(売上=顧客数×顧客単価)と出るお金(支出=仕入費用+給料+家賃等)ぐらいを書いておけばOKです。

例えば、“事業の全体像”が以下のように書けたとします。

記載例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・経営理念…高品質・正確な医療、飼い主への徹底的な情報開示とカウンセリングを提供することで、飼い主の精神的満足度に寄与する。

・事業内容…動物病院の運営。猫のライフサイクルを通じて通うことができ、避妊・去勢を入り口として、内科、肥満指導等を提供する猫専門医院。

・ターゲットとする市場…**県**市に住む猫の飼い主(★)

・顧客ニーズ…1匹の猫を知り尽くした獣医師に、適切な医療を提供してほしいというニーズ(★)
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「経営理念」と「事業内容」は、記載レベルは甘いですが、書けています。しかし、「ターゲットとする市場」と「顧客ニーズ」に関しては、上の2つに比べると記載に迷いがあるようです。分からなかったり考えがまとまっていない場合は、記号(この場合は★にしています)を付けていって、まずは完成させることを目指します。


次のステップは「事業計画書の本格検討」
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完成できましたでしょうか? おそらく初回で全部の項目を納得いくように記載することができる方はまれだと思います。ここで大切なのは開業するにあたって、「何を考えることが必要なのか」を知ることと、「足りない視点は何か」を知ることです。記号がついた項目が「足りない視点」になります。

今回はこのあたりにして、次回は上記で作った事業計画書の本格検討に移りたいと思います。

ライター紹介

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蓮沼 淳

Vet Life編集長。1978年生まれ。2000年東京外国語大学外国語学部卒業。 IT・業務オペレーション企画・新規事業開発などを中心にキャリアを積み、シグニではシグニペット健診・シグニキャリアの推進に従事。 獣医療業界に携わる方に向けて、わかりやすく・簡潔にをモットーに記事を発信。