【犬の保定術シリーズ】処置別の保定法 ①後肢伏在(サフェナ)静脈採血時の保定

白金高輪動物病院、中央アニマルクリニック 総院長 佐藤貴紀先生に、犬の保定について記事を執筆いただきました。さらなる技術習得に、復習に、ぜひご活用ください。

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【佐藤先生のプロフィール】
麻布大学を卒業後、西荻動物病院およびdogdays東京ミッドタウンクリニックにて、副院長を務める。
 
2008年:白金高輪動物病院 開院。
2011年:中央アニマルクリニック 開院。
2015年:Dog Care Salon 『LINDO』 オープン。

現在はFORPETSグループの総院長として、白金高輪動物病院、中央アニマルクリニック、LINDOを束ねる。
専門は「循環器」で、獣医循環器学会認定医。「一生のかかりつけ獣医」を推奨するとともに、専門分野治療、予防医療に力を入れている。
 

はじめに
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保定とは、動物を検査治療する際に動かないようにすることが大前提にあります。

その大前提を元に、犬の保定は犬種、性格、大きさ、そしてさまざまな状況において臨機応変に対応する必要があります。ここで全ての保定を説明することはできませんが、獣医師の目線から保定が重要とされる状況別に説明していきたいと思います。

保定をする側の人間は、検査を行う(保定をしてもらう側の)人間に対し、検査などがやりやすい保定をしてあげることが望ましいと言えます。そして、保定をしてもらう側の人間は、保定者に対し感謝の気持ちを常に持つことを念頭におく必要があります。


後肢伏在(サフェナ)静脈採血時の保定
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保定時の動物との位置関係:
保定者の体の前面と、動物の側面が接する位置関係

保定に必要なもの:
エリザベスカラー、駆血帯など

保定者:
小型犬は1名、中・大型犬は1~2名

(1)保定者が利き腕とは逆の腕で、顔が動かないように頸部を保定します。
◆ポイント◆--------------------------------------
顔が動くと体も動くため、顔をしっかりと固定すること。
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(2)保定者が利き腕を使い、後ろ足を固定します。
◆ポイント◆--------------------------------------
膝関節を固定していないと足の伸展運動が起こるため、しっかりと関節を固定します。
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(3)しっかりと保定ができたら、最後に駆血を行います。
◆ポイント◆--------------------------------------
血管を怒張させるために駆血は重要です。犬種によっては駆血がうまくいかない場合もあるため、上下にずらすなどしましょう。大型犬は手の全てを使って、駆血を行います。
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犬の特徴別対応術
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・おとなしい犬の場合
・2kg未満の犬の場合
・保定を嫌がる犬の場合
・中・大型犬の場合


・おとなしい犬の場合
(1)保定者の腕をまわして犬の頸部を固定。この際、保定者は犬と体を密着させます。
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(2)膝が動かないように膝関節を固定し、親指で大腿部の尾側を固定、その他の指で膝の頭側の関節を固定します。
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(3)親指で大腿部の尾側を駆血。この場合、駆血したら動かさないようにします。血管が怒張しない場合は、親指を上下に動かしましょう。
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・2kg未満の犬の場合
(1)特に小さい小型犬などでは抱っこをして保定します。片方の手で胸の部分から抱え込みましょう。
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(2)抱っこをした場合もそうでない場合も、保定していない逆の足が動いてしまわないように、写真のように両方の足を持ちながら保定しましょう。
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(3)親指で大腿部の尾側を駆血します。この場合、駆血したら動かさないようにします。血管が怒張しない場合は、親指を上下に動かしましょう。
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・保定を嫌がる犬の場合
(1)顔が動かないように犬の頸部、肩甲部、上腕部を脇で挟み保定します。(写真A:保定の全体像が分かる図、写真B:顔の保定部を見やすくした図)
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(2) 後ろ足が動く場合は、両手で保定しましょう。利き腕は膝関節を固定し、もう片方の手は下の写真のように大腿部を頭側から持って前に動かないようにします。201611301917_1.jpg

(3) おとなしい犬、2kg未満の犬の場合と同様です。両手で押さえる場合でも、駆血部分は変わりません。
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・中・大型犬の場合
(1)保定を嫌がる犬と同様に、後ろ足が動きそうな場合は顔が動かないように犬の頸部、肩甲部、上腕部を脇で挟み保定します。もし動きそうであれば、保定者を2名に増やし、1名は顔を保定しましょう。
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(2)中・大型犬も、小型犬と同様です。あまりに足が太い場合は両手で保定をしましょう。この場合は片方の手で膝関節を固定します。
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(3)親指で駆血ができない場合は利き手で膝関節を、もう片方の手で駆血を行います。また、採血者に動きやすい旨を伝えておくことも重要です。
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◆ポイント◆--------------------------------------
中・大型犬の場合は、下の写真のように採血する足が診察台についていると安定します。
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他の処置別保定法はこちら!
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※第2回「頸静脈採血時の保定」についてはこちら
※第3回「留置処置(前肢)と皮下注射時の保定」についてはこちら
※第4回「超音波検査時(心臓、腹部)の保定」についてはこちら
※第5回「レントゲン検査(胸腹部)・眼検査時の保定」についてはこちら
※第6回「耳掃除・爪切り・肛門腺絞り時の保定」についてはこちら

ライター紹介

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鈴木 杏奈

好奇心旺盛でグルメな獣医師ライター。麻布大学卒業。 獣医師免許の他にトリミングライセンスやダイビングライセンスも取得しているが、臨床には進まず、動物看護師とトリマーの専門学校の教員・水の分析会社・ペット保険会社を経験。 現在は「獣医療業界に携わる方々にワクワクを!」という思いのもと、シグニ株式会社でイベントやセミナー・キャンペーンなどのおもしろ企画や有益情報の配信などを行っている。